※この記事は『KING OF PRISM Shiny Seven Stars』第4章のネタバレを含みます。
シャインが悪魔である理由
シャインのプリズムショーは、目が離せない魅力があるのにおぞましい。そのおぞましさとは、彼を見つめる人々から、心を文字通り奪うところにあるのでしょう。"感動する"のではなく"感動させられる"……シャインのショーが持つ、ファンの意思を規定するような強制力が働くというのは、自由意思の剥奪に他ならない。
プリティーリズム及びKING OF PRISMは、いままで人間の自立した意思の力を描き続けてきたと思うのですが、それを描く手法としては、家族や友情、恋などの人間ドラマがメインになっていました。第4章でもそれらは当然描かれるのですが、明確に敵として人間の自由意思を奪い取る者が現れるというのは、いままでにない展開ですよね。
シャインは「僕が1番みんなを愛すことができる」と豪語しますが、それは一方的な愛の押し付けであり、作中でも繰り返し否定され続けてきたもの。
エーデルローズセブンスターズのプリズムショーは、シャイン(と彼の思想)に対するカウンターとして機能します。印象的なシーンは二点。ひとつめはシン(シャイン)のショーを受け入れられなかったファンの態度です。ほとんどのファンはシンの謝罪を受け入れましたが、例えわずかだとしてもそうではない、傷ついたファンはいて、シンにそれを認識させる描写はかなりショッキングでした。だからこそ、そのあとの拍手で応える場面が輝くのですけれど。当たり前ですが、受け手の一喜一憂は作り手にも伝わっているんですよね。作中においてもメタ的にも、ファンの負の感情も受け止めて、それでも前に進んでいくという、キンプリの気概を感じました。
ふたつめはこのことに通じていて、プリズムの煌めきが失われたとき、スタァを支えたのがファンであったことです。『うたの☆プリンスさまっ♪』や他に視聴したアイドルものに対しても同じ印象を受けるのですが、キンプリにおいても作り手と受け手は相互に支え合って成り立っているというのが原点としてあり、それをエンゲージに例えることでそれを示したのだと思います。
シャインに決定的に欠けているのは双方向性であり、今回は彼らとファンのエンゲージ(合意)によってシャインを封じ込めることに成功しましたが……シャインは"結束"や"信頼"を使ってまたなにかするんでしょうね……2期楽しみにしてます。
最初はシャインに対して、「M型の人間は本当に利己的だね」と言うだけのことはあるな、お前が1番利己的だよ!と思っていたのですが、たぶん違うんですよね。そもそもシャインは人間を見限っているんですよ。だから"愛される"ことにまったく意義を見出していないし、自分ひとりでショーをする。
ジュネがプリズムワールドに帰らなかったのは聖と共に生きたかったからであって、スタァを続けて使者としての使命を果たしていたのはそのための手段だった。しかしシャインはそうではない。シャインは自分で世界を見た結果、煌めきを広める使命を果たすに相応しいスタァは自分以外にいないと思っている。そこに悪意はないというのがますます悪魔ぶりを加速させる。
シャインが"悪魔"というのは比喩ではなく事実なんですよね。人間を堕落させる存在だから。シンのショーは悪魔憑きですね。りんね=イヴ、シャイン=アダムで、りんねとシャインを新規システムに移行(楽園追放)するためにルヰ=天使が生まれたというのも絡みあるんだろうな……時系列整理しきれていないこともありこの話はここまでで。というかプリリズのためにエヴァ見なきゃいけなくなったのめちゃくちゃ悔しいな!!!
タイトル回収しますが、シャインのスタァもファンも問わず、とにかく人間を舐め切った態度にめちゃくちゃ腹立ったので、2期で絆を試されてしまうセプテントリオンとファンのみんなには本当にがんばってほしい。
おまけ1:限界速水ヒロオタクのひとりごと
この期に及んでも速水ヒロの呪縛から逃れられなかった。最初は、シャインから出てくる言葉の数々に、オバレを結成する未来に辿り着くことができなかったヒロを感じてつらくなっていましたが、よくよく考えたら、"みんなから愛されたくてみんなを愛している人"と"みんなを愛したくてみんなを愛してきる人"とでは、こんなにもアプローチが違うんだな……ということに気づきました。速水ヒロはもう愛され方を知らない子供じゃないのだと、シャインのショーを見て実感することができました。
第4章を見て、やっぱりシンくんはヒロくんの後を追う者なんだと思いました。謝罪シーンや、自分の罪を許せない人間がいることをわかって舞台を降りようとするところとか、似ている部分が多くて、絶対シンくんにプリズムキングになってほしくなります。
ところでヒロくんの父親、やっぱりシャインというか、響ワタルなのでは? コウジの言動的に。それか真田。ひろこの言動的に。
おまけ2:どうしたんだ法月仁!
いつからそんなに丸くなったんだ仁! やっぱりプリズムキングカップで聖に実力で勝てなかったこと後悔してるの!? 実力での勝利に拘ってるのってそのせい!?
愛に「法月に似たのね」って言ってもらえてよかったね!!! 次は聖と仲直りしようね!!!
ルヰに対して、若いころの自分、聖、ヒロ、愛を重ねているのって、わたしが思ってるより悪い話じゃなかったことに安心しました。しかしそれにしても丸くなるきっかけはなんだったんだろう……ヒロくんのショーに思うところがあったのかな……。
最後に
『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』ですが、「『蒼穹のファフナー EXODUS』は『蒼穹のファフナー THE BEYOND』の前座」的なノリを感じました。続編、いつまでも待つので、絶対にやってほしいです。
5/6加筆:悪魔について
七福神エデロ生の件についてちょっと思ったことがあった https://t.co/eAuk0uZBaE
— ゆかこ(光) (@yukakoSSR) 2019年5月4日
こちらのツイートを受けて加筆します。
思えばシャインの行動原理にルシファーが堕天した理由がちらつく。諸説あるみたいですが、アダムに跪かなかった(「M型は〜」)、人類の救済(「僕ならみんなを満足させられる」)あたりがかなりそれを匂わせている。
仮に、仮にね、響ワタル(シャイン)がヒロの父親だとしたら、ヒロの母親に近づいた目的は一体……? 一応ルシファーにはリリスとの間にリリンという子供がいる説とかはあるみたいだけど、「万人を愛する」ために動いているシャインが特別な女をわざわざ作るとは思えないので……まさか「ワタみお回収すっか! ゲラゲラ」とかではないよな……?
5/6加筆:ファンを切るということ
印象的な記事があったので加筆します。
わたしはシャインの純粋な邪悪さや、それが遺憾なく発揮されたショーがかなり好きですが、意識を乗っ取られたとは言え、みんなの笑顔を考えて一生懸命がんばるシンくんがアレをやってしまったのにはわたしでさえびっくりした。それに傷ついてしまったファンが会場にいたように、映画館にも確実にいたというだけのことだよなあ……描写されなかっただけで、シンくんに拍手を送れなかった/送らなかったファンは確実にいるし、現に映画館にはいたわけで。
「わたしは好きだよー」があるならば「いやそれはない無理」は当然ある。第4章の公開で一部の既存ファンを"切ってしまう"可能性は、制作もめちゃくちゃ考えたと思うんですが、それでも断行した……という状況を12話でなぞってしまうのは、"切られてしまった"人にとってはかなり残酷な話だよなあ。
5/7加筆:善悪と敵味方
どんだけシャインの話するんだよって感じだけど、推しの父親(の憑依霊)かもしれないから許してくれ……これから書くことは速水ヒロくんにほとんど関係ないけど……。
第4章見て真っ先にこの方のブログを思い出した!笑 モラハラクソ男の生態を予習していたおかげでシャインのことをモラハラクソ男として愛せそうです。ハッピー。
シャインの「僕は全力でみんなのことを愛すから、みんなも当然全力で僕を愛してくれるよね?」という独善は、セプテントリオンの完璧なカウンターがキマるほど完全に作中否。しかしわたしは彼の改心を求めていないというか、作中否であり続けてほしい。これはシャイン=悪であってほしいと言いたいわけではなく、セプテントリオンのシャインとの向き合い方が、わたしが見たいものになる気がするからです。
シャインはもはや個である以上に悪魔的暴力性の化身で、それは程度の差はあれだれもが持つもの。だからシャインのことは完全に滅ぼすことはできない。他者を守り支えることを誓っているセプテントリオンが、シャインを通して自分の支配欲とどう向き合うかという話になってほしいのでシャインにはずっと敵であってほしい。
5/8加筆:速水ヒロのショーは"暴力"か?
これに関してはガチの独り言です。
前に「速水ヒロのショーは陽性強めだった」とは言ったけど、だからと言ってシャインと同質とまで言われてるのを見て冷静ではいられない。
確かに印籠ジャンプ、なんならショーそのものに強制力があったけど、ヒロが貫いた誇りでさえ傲慢に見えるというのなら、それこそシャインが言うように「男のスタァは利己的で本質的に他人を愛する者はいない」ということになる。「女の子の心を最もときめかせる者」がプリズムキングですが、個々人が考えるときめきは当たり前に違っているし、なんならシャインのやり方だって誤りではないと思う(飛んでるヤツの思想は最低ではあるが)
そもそも"本質的な愛"ってなに!?!!? 殴るのが愛と言う人間が生きるこの地球で、なにを本質だと思ってるんだシャイン!!! シャインマジで腹立つ……。