情緒よりも主観。

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ドドド名作『幻想水滸伝Ⅲ』を13年積んでいたオタクの末路

13年積んでいた『幻想水滸伝Ⅲ』を無事にクリアして物語の切なさに打ちひしがれている……。

小癪にも「物語が進んでしまうことが怖い」「評価が分かれている」「村山信仰」などの理由で積んでいたのですが、現代にも通じるテーマ*1の描き方が素晴らしく、108星も魅力的で非常に楽しめました!

これからわたしが楽しかったところを書いていきます。ネタバレ満載だけど、このゲーム以上に百聞は一見にしかずを実感したゲームはない。1・2既プレイでもだ。オチがわかるとやる気が削がれるタイプ以外はどんどん読んで幻水3をやってほしいです。

※感情の整理用に書いているので、文体が一部めちゃくちゃ真剣で、一部めちゃくちゃ軽いです。

 

 

あらすじ

身もふたもないのだが、まとめるのが苦手なのでWikipediaを読んでもらえないだろうか……?

わたし流に説明すると、商業立国ゼクセン連邦と、草原で生活を営む部族国家グラスランド、この世界の"神"たる存在『27の真の紋章』を信仰するハルモニア神聖国を巻き込んだ『真の紋章』を巡る戦争の話、といったところです。

 

主人公は3名。

グラスランドの部族のひとつカラヤ族の少年ヒューゴ

ゼクセン騎士団で『銀の乙女』と祭り上げられるクリス

ハルモニアの傭兵ゲド

それぞれの視点で動く物語は、50年前にグラスランドを救った炎の英雄という男の存在によって束ねられていきます。

 

 

ヒューゴとクリス:相互理解と許しは別物である

彼らの故国同士、ゼクセンとグラスランドの折り合いは悪く、互いを「蛮族」「鉄頭*2」と呼んで蔑むほど。物語は争いに疲弊した両国の休戦協定が破綻することから始まります。戦火の中、ヒューゴの友人ルルがクリスの手で殺されてしまうことにより、彼らの間には因縁が生まれることとなります。

ヒューゴはクリスへの憎悪を抱えることになりますが、逃亡先のビュッデヒュッケ城の城主トーマスとの出会いが変化をもたらします。本作の天魁星*3であるトーマスは、出身が無名諸国ということもあり、両国の代表者を仲裁する役目を持つようになります。そんな彼の中立思考を代表する言葉が「もっとお互いを知るほうがいい」というもの。

ヒューゴは各所を旅しながら、その言葉の意味を考えることになります。ハルモニア正規軍の襲撃を受けたチシャの村*4で、ヒューゴはグラスランド人を守るクリスの姿を見ます。その姿を見たヒューゴは戸惑いの末に、「だれかが悲しむ姿を見ないように」という気持ちを、だれもが持つものであるからと、クリスへの敵対心を一時的に忘れることとするのでした。

トーマスの言葉は視点を超えてクリスにもかかるものとなっていきます。クリスは敵国の人々がどんな生活を営んでいるか知ろうとしませんでした。彼らが大切にする風俗文化を「蛮族の迷信」だと拒絶さえしました。

そんな彼女を変えたのがアルマ・キナン*5のユンという少女です。ユンは"口寄せの巫女"に課せられた役目を果たし命を落とします。クリスは彼女の境遇に対して、「迷信のために生贄になるのはおかしい」と憤りますが、ユンは「私が成すべきこと、成したいを成すだけ」とクリスを諭します*6。ユンの言葉はクリスに残り、彼女はアルマ・キナンの族長ユイリが施すまじないを受け入れるのでした。

そしてわたしは、互いの文化や考え方を理解することができたふたりが、和解することなくエンディングを迎えたことにとても心を揺さぶられました。ヒューゴは友人を殺したクリスを許せず、クリスの中にもグラスランド人に対する憎しみは残り続ける。共通の敵の存在で成り立っていた共闘関係をもってしても、両国の長年の禍根を払拭し切ることができずに終わったこと……非常に地に足のついた終わり方をしたと思います。しかし感動したのはそれで終わったからではなく、ふたりが互いを許さないまま、自分の国の別れの挨拶*7を交わして別れたところにあります。

憎しみの気持ちがあっても、お互いのことを尊重することは忘れない。ふたりの姿からはそんなテーマを読み取りました。

 

 

炎の英雄:英雄だって人間なんだ

わたし炎の英雄めちゃくちゃ好きなんですよ(唐突)なぜならいままでの名付けキャラの中で1番自由で人並みに欲張りなやつだから!!!

炎の英雄はグラスランドとハルモニアの間に50年後を期限とした不可侵密約を結ぶ立役者なんですが、この期限の理由が「自分と愛する女が老いて死ぬ間」で、そしてそのまま自分に宿る『真の紋章』を封印して、恋人を娶って静かに余生を過ごした。大勢のだれかのためには生きなかった。

幻水において英雄降りは珍しい生き方ではないんだけど、後世の人間が頼みの綱として頼ろうとしたら自分の幸せのために生き切ってもう死んでいたっていうのが最高に無責任(※十分責任は果たしました)! 大好き!

 

 

ゲド:立ち絵とやる気のギャップがヤバい

ゲドのこと気怠そうなおじさんだと思ってたんですけど、幻水名物やたら多い「!」を使う人だったのでギャップに驚いた。

1番は破壊者*8からルビーク*9を守ったときに発揮された熱さですね。フランツ*10を罵る村人を殴りつけて「お前はなにをしていた?」と詰めるところ。

「その潔癖さが炎の英雄を苦しめていた」と言われるものの、このシーンにおいてはゲドがそういう人間でよかったと思います、わたしも「は? なにこの村人」って思ったので。

 

 

ゼクセン騎士団:ここは銀河帝国か?

でっかい男たち5人と少年1人がクリスのためにワイワイしてるのめっちゃよい。平成の銀河帝国だった、私得。クリスに惚れてるやつも2人くらいいるけど、恋愛抜きの忠誠心が全員ガチなところが信頼できる。ラスダンに騎士団で突入したときのイベントもよかった。みなが1章で背負った罪と許しの話。

 

 

十二小隊:愉快な仲間ムーブと命のやり取りしてるときのテンションの差で風邪引く

強面のおっさん、お金と女が好きなおっさん、酒が好きなおっさん、気の強い女、無口な美形、おてんば少女の集まりという「オタクの好きを詰めました!」感は異常。普段は愉快にしてるのに、ラスダンでは傭兵としての一面を見せるとか、ゲドのことを全面的に信頼しているところとか、かっこよくて泣けてしまったよ……。

 

 

ジョー軍曹:彼を嫌いな人間はいません

立ち絵からして超絶イケてるアヒルなのだが、ポリゴンがかわいいせいかマスコット役もこなすすごい男。ヒューゴへのアドバイスがいちいちかっこよくて惚れてしまった。本編中はフリーだけど妻子と復縁するので失恋したけど。

 

 

ルックとササライ:つらい

さすがに15年以上前のゲームなので、ルックが敵だというのはずっと前から知っていた。そして13年積んでいた理由のひとつに、それに耐えられそうにないからというのもあった。今回幻水3やろうと思ったのはまとまった時間が取れたからなんだけど、実際やってよかったと思う。

ルックに関しては、彼が進んで孤独を選んでしまったことが1番つらかった。結果として世界を守る手段をひとつだと決めつけてしまった。そしてわたしたちに与えられた解決策が、彼を倒す以外になかったこともつらい。わたしからすれば2度の戦争を共に戦った仲間だし……でもヒューゴにとっては友人を喪う根本的な原因なんだよな……。

ルックとササライが平行線にならざるを得ないこともつらい。「温室育ち」「魔女に洗脳された」って言い合うように思想の根本が違うから。でもヒューゴとクリスのように理解し合う余地がなかったことがつらいよ……。

 

 

まとめ

先述のような理由で、幻水3がこんなにいいゲームだって知らずに13年過ごしてきたのが馬鹿みたいだと思う。でも蒼穹のファフナーを噛み砕く力が備わったいまだからこそ、幻水3を楽しめているようにも思います。まだヒューゴ編しかやってないので、感情が落ち着いたらクリスとゲドの英雄ルートもやりたいと思っています。ミニゲーム制覇してないしね!

 

そういうわけでドドド名作『幻想水滸伝Ⅲ』をよろしくお願いします。

 

 

幻想水滸伝III

幻想水滸伝III

 

 

*1:という名のわたしが好むテーマ

*2:ゼクセン騎士団の鉄兜に由来。

*3:本作を除き、幻想水滸伝シリーズで主人公を担う宿星のこと。

*4:グラスランドの村のひとつ。

*5:グラスランドの隠された村。

*6:閑話休題:このシーンめちゃくちゃ蒼穹のファフナーの皆城乙姫や皆城織姫を思い出すシーンになっています。ちなみにわたしはユンが最後に自分の死を理不尽だと怒るクリスに出会えたことが本当に幸せなことだと思っています。

*7:ゼクセン式:握手、グラスランド式:抱擁とまじない

*8:『真の紋章』の破壊を目論む敵。

*9:虫使いの村。ハルモニアの属領。元グラスランド。

*10:ハルモニア本国におけるルビークの地位向上のために働いていた青年