情緒よりも主観。

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『彼が愛したケーキ職人』で家族について考える

ざっくりあらすじ

ベルリンでカフェを営む青年トーマスが、仕事でイスラエルからやってきたオーレンという男性と恋人関係になる。オーレンには妻子がいるけれど、ふたりは逢瀬を重ねていく。今回もオーレンは「また1ヶ月後に」と言い残してエルサレムに帰っていくが、それを境に消息を絶ってしまう。トーマスはオーレンが亡くなったことを知り、彼の家族に会いにいく。

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映画「彼が愛したケーキ職人」公式サイト

 

家族ってなんだろう

オーレンはトーマスとの逢瀬の最中に「家族はいいぞ」と言ったのに、その後妻のアナトに「俺は家族を捨ててベルリンに住む」って言ったのが全然繋がってくれなかった! でもついさっき繋がった! オーレンはトーマスの家族になろうとしたんだ!

トーマスは、父は蒸発、母は早逝、育ててくれた祖母も2年前に他界という天涯孤独の青年でした。オーレンが家族の良さを説いても「自分には無理だ」と諦めているような口ぶり。オーレンがアナトとイタイを捨てようとしたのは、そんな彼の家族になるため。トーマスはアナトからオーレンの死の真相を聞かされたときにそれに気づいたんだろうなあ……だから泣きそうになったのを堪えたのだろうね。

これはトーマスからすれば叶わなかったけど嬉しいことなのだが、捨てられるアナトのほうは堪ったものじゃない。カミングアウトはオーレンにとっては新たな家族の元に向かうためのケジメだけど、彼女からすれば家族を捨てて出ていく夫という形になる。

ひとりの人間が「家族になる」ことを選んだら、結果として「家族を捨てる」ことになった。血の繋がった家族と言っても、人間と人間が寄り添い合って生きているに過ぎない。その繋がりを持つことにも断つことにも責任が生まれる。家族は最も身近な社会共同体と言うが、それを実感できる作品でした。

 

おまけ

君の名前で僕を呼んで』にも見られた恋人と同一化したがる描写、防衛機制以外の理由が読み取りきれないので他の意見があったら知りたいな。