情緒よりも主観。

うたプリやアニメや映画について、思ったことをいろいろ書くオタクブログです。

2023年5月28日『不思議の国の数学者』を観ました。

※どんな映画かは公式サイトを見ること〜!

 

ちょっと時間経ったけど、やっぱり「もしかしたら今年イチかもしれん……」と思ったので自分用に感想書きました。

特に好きなポイントに絞ってます。

 

関係の結び直し

最終的にハクソンがジウを「友人」と定義して関係を結び直したのが深く刺さりました。

ハクソンとジウ。学校警備員と高校生という交わらないはずのふたりが、数学を接点に師弟関係として関係を深めていきます。

中盤のジウがハクソンの家で夕飯をご馳走になるシーン、ふたりのバックボーン*1込みで親子っぽく見えるなあと思っていたので、最終的に擬似親子っぽい感じになるのかと予想していたら見事に裏切ってくれました!

わたしは「他者同士であり続ける」関係によわよわなので、ふたりが「友人」という「他者同士の関係」を選んだのがすごく素敵なことだと思いました。

「他者同士」と言うと、ハクソンがオイラーの等式を熱く語るシーンがあるのですが、それを聞いていたジウがハクソンと同じようにオイラーの等式には感動しなかったというのが、ふたりが違う人間であることを強調しているよう。その後のπソングを聞いたジウが数学の美しさに心を動かされるのが際立つのもあり好きなシーンです。

 

旅立ちエンドは最高

わたしは自己犠牲を伴う利他的行動がきちんと報われるのが大好きなので、クライマックスのハクソンの選択とその結果が最高すぎてベチャベチャに泣きました。

自由を求めて逃げてきたのに逃げた先にも自由はなく絶望していたハクソンが、縛りを受けるとわかって進んだ先で自由を得て旅立っていくの、完璧すぎる……!

タイトルは『不思議の国のアリス』オマージュでもあるようなのですが、「行きて帰る」の発展系にも見えて秀逸だと思いました。

 

笑いあり涙ありってこの映画のためにあるんじゃないかってくらい感情揺さぶられる名作でした。機会があったらみんなも見てね。

*1:ジウは母子家庭出身。ハクソンは妻の死後、息子と共に脱北したがその息子を喪っている。

2023年5月21日の文学フリマ東京36にサークル参加しての感想

自己紹介とかスペースの内容とか

・普段は二次創作小説を書いている同人女。赤ブーの二次創作オンリーとかでたまに本を出している。

文学フリマは数年前にツイッター経由で認知。

・一次創作でも本を作りたくなったこともあり、文フリ東京36の新刊として1冊作った。

・スペースには有料同人誌3冊置いてました(一次創作1種、二次創作2種)

・スペースに来た人数→両手で数えられるくらい。

・配れた本の数→片手で数えられるくらい。

 

感想の内容

文フリ東京36にサークル参加して思ったことをまとめつつ、一次創作イベント・二次創作イベント共通のアプローチ方法を検討します。

 

Webカタログでのサークルチェックが難しすぎる

参加サークル数1500くらいだったけど、これ全部チェックしてお目当て絞り込んでる人どれくらいいるだろう……?と思った。

総参加サークル数は二次創作イベントのほうが多いけど、事前にジャンルやカプでサークル絞るから、実際目に入るサークルは多くて200?くらい?だろうか……。少なくとも「今日ここに来てるサークル全部見る」ことはない、というか無理、5000くらいサークルあるし。

文フリ東京36の1500サークル、会場で全部見ようとしたけど無理だった、自分がいるホールから出られなかった。

ではWebカタログで事前のサークルチェックできてたかと言うと、それもできなかった。

理由としては、サークル総数が多い割にカテゴリ分けがおおらかというのがある。

自分自身詩歌カテで申し込んだのに小説も配ってたからアレだけど、Webカタログ見てて申請カテゴリと頒布物の内容が違ってるのがまあまああった。

サークル総数100切ってるならカテゴリが機能してなくても全部見れない数じゃないからいいかもだけど、そうじゃないならサークルカテと頒布物カテ別で作ってもいいんでないと思った。

 

空間レイアウトどうにかならんか?

サークルスペース広めなの最初はやったーと思ったけど、代わりに通路が狭いのいま気づいた。

通路狭いとすれ違いのタイミングで素通りになっちゃうこともあるし、もう少しなんとかならんかな。

 

原作パワーと神絵師パワーは強い

一次創作と二次創作を両方置いたところ、反応がよかった(ぱっと見で手に取られた)のは二次創作だった。原作パワー・神絵師パワー、ありがとう。

それにしても一次創作の告知難しすぎるにゃん。

 

無配は絶対に作ろう

無配は絶対に作ろう。

今回完全に油断してペーパー作らなかったので、スペースに立ち止まってくれた人に渡せるものがなにもなかったのを後悔しています。

無配がなかったゆえに、スペースに立ち止まってくれた人の帰宅後にそういえば……と思わせる機会さえなかった。爪痕残すなら無配必須。

ペーパーでも名刺でもいいから、無配は絶対に作ろう。

 

結論

イベントの内容問わず「無配は絶対に作ろう」というのが今回得た知見です。

Webアンケも提出しておこうかなあ。

2023年2月15日の考え事

 わたしが特に好きな作品はリアルタイムな展開が継続してn年になることが多いのですが、ビジネス的成功以外の続く要因はなにかなあということを考えていた。

 この数年ずっと持ち続けている結論は「信頼関係」だし(作り手と受け手の信頼関係が作品をおもしろくしてるよ、という話で学部卒論書いたオタク)、わたしの中でそれが揺らぐことはたぶん今後もないと思う。

 今回ぼんやり考えてたのは受け手→作り手への信頼ではなく(これはよっぽど強い思想がない限りは「もっとおもしろいものが見たいです」に集約されるから)、作り手→受け手への信頼。

 長く続いている作品って、タイトルはもちろん設定もたくさん押さえてるほうがいい味が出ておいしくなるとわたしは思うけど、作り手がそれを前提に話作るのは「期待が重い……」気がする。

 個人がそれを網羅するには限界がある。メディアミックスしてる作品だと特に。一作品のためだけにお金も時間もかけられない人はたくさんいる。つまり、ファンが持つ作品知識に差が出てくる。

 長く続く作品の受け手は上記のような状況になるので、作り手は結構試されるよな〜。好きなもの好きなように作ろうとすると新規を置いていくのではないか、でも絶対過去のあれこれ組み込んだほうがおもしろいよ〜みたいな葛藤、めちゃあるだろうな。

 とはいえわたしは作り手は好きなもの好きなように作れ派です(わたしはお出しされたものをそのまま食べる派だから)(ちなみにわたしは「全部見ろ教」だけど、n年追ってるジャンルの原作1本しかプレイできてないとか、ドラマCD全切りとかしています)

 あと、よく「知っているほうが偉い」とかで揉めてるけど、上記のように知識の量に差があるのは当たり前だから、「いまの自分はこう思います」が気軽に発信されるといいなと思います。

2022年11月17日の考え事

最近読んだフロム『愛するということ』が、去年読んだ國分功一郎『暇と退屈の倫理学』や最近観た『すずめの戸締まり』と繋がった気がするのでなんとなく筆を取っています。

※ざっくり感想文なので各タイトルの深い話にはなりません。

 

   *

 

誰かに愛されていると自覚したとき、人は自分を許すことができる。

自分を許すとはどういうことだろう。

わたしは「自分はここにいてもいいんだ」という感覚のことだと思う。

人は大なり小なり疎外感を抱くこともあると思うのだが、愛はその疎外感を解消する。

では自分を許すために誰かの愛を求めるのは依存ということにならないか。

『愛するということ』をめちゃくちゃ圧縮すると「愛は自立した人間が交わすもの」になるが、自立した人間は愛されたいから愛するのではなく、愛するために愛すのだと書いている。

そもそも自立した人間とはなんだ。

わたしは『愛するということ』や『暇と退屈の倫理学』から「自分と向き合った結果、他人とも向き合えるようになった人間」と読み取った。

やや脱線だが、『すずめの戸締まり』、鈴芽の話。

初めて後ろ戸を見たとき「死ぬのは怖くない!」と叫んだ鈴芽が、旅を通して成長し、最終的に「死ぬのは怖い」と考えを変えるのが印象的。

自分と向き合うのはすごくすごく大変。

嫌なところばかりが目につくし、これが自分のいいところだと認めるのも恥じらいが働いて一苦労。

それでも「それが自分」だと認めたとき、人は初めて自立することになるのだろうか。

自立したからといって内面的な欠落は埋まらない。

自分の中の欠落を埋めるために愛を一方的に求めるのではなく、双方向的に補い合うのが愛ではないか。

つまり……ST⭐︎RT OURSってこと!?(終わり)

『劇場版うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEスターリッシュツアーズ』感想戦メモ

2022/09/11に開催したTwitterスペース用に作ったスタツ感想戦メモです。

全部の「よかった」「好き」を整理しようと思いますが全然できていません。

喋りながら生えた感想とかもあるのですが反映しておりません。

メモとしてご活用ください。

 

OP~マジLOVEスターリッシュツアーズ

・始まっちゃうんだ~という感じで見ていた気がする。

・車の免許より先に飛行機の免許を取るみなさん。わからん、※イメージ映像です、かもしれないけど。

・Shining Air Lineのときは副機長だったのが機長に昇格してるの時の流れ! 歴史! という感じでいいですね……!

・ライブで歌うの難しそうな曲だな、と思ってたけど、めちゃくちゃ歌うじゃん……!

・トキヤがカメラを見つけるのめっちゃ早い。

 

MC(自己紹介)

・音也が「わ~!」ってはみ出しちゃうのわかる!となったあとにトキヤがたしなめるやつわかるわかる!なんだよな。

・トキヤの自己紹介がクソデカ「一ノ瀬トキヤです!」なのめちゃくちゃいい。

・レンくんが、一拍溜めて投げキスするの「らしい」がすぎる、にちゃにちゃ。

なっちゃんと聖川の「ライブの中身は」「まだ秘密だ!」「しぃ~」かわいすぎ。

・那月音也翔で「おそろい!」するのかわいすぎ。

・「7人は多かったですか?」って言うセシルちゃんかわいい。

 

Ok, Hello World

・ファンに向かってそのデコはなんだ!?

・ファンに向かってそのギターテクはなんだ!?

・てか表情よすぎる。

・大サビのピック持ちながらマイクをきゅってするところよすぎ、なに?

 

Ready to be a lady

・脚長すぎ、股下5m?

・レンくんと翔ちゃん、お互いに「かっこいい男」としてリスペクトし合っているのでこの二人がコンビなのいいなあと思った。

・春歌ちゃんに言いたい言葉!?

 

トリッドラヴ

・表情がよすぎる。柔和そうなのになに考えてるかわからない高貴で色気のある表情。

・オリエンタルな振り付けだけじゃなくフィギュアスケートやバレエの振りが入っているのも好きだな。

・「音楽の国の王子愛島セシルがうたプリ界の太陽と月=一十木音也と一ノ瀬トキヤを召喚する」の文脈がありすぎる。

・セシルちゃんは魔法が使えるので飛んでも許される。

 

Snow Ballade

・美しい=聖川真斗のこと。

・スノードームの中で着込んでいた真斗=守られるだけで殻を破れずにいた真斗が、自ら手袋を外してその身でドームを溶かす流れ、真斗の強くなりたいという思いを感じてすごく感動した。

 

愛をボナペティ♪

・うたのおにいさん四ノ宮那月概念。

谷山紀章さんが「那月にステージで料理してほしい」って言ってたのが叶ってよかったなあ。

・「Merci.」の響きが美しい。

 

TRIGGER CHANCE

・めちゃくちゃ踊りながらめちゃくちゃ歌いながらめちゃくちゃマジックやってて「やることが多い……!」にならなかったのか!?さすがだよ……。

・1曲の中での表情の幅がすごい。わたしはHAYATOっぽい顔出てきて終わりになりました。

 

来来☆オーライ

・翔ちゃんって、運動神経がいいのかな!?(うたプリ初見の方?)になる。なんだかんだ翔ちゃんの運動神経のよさにフォーカスされたパフォーマンスを見るのは初めてな気がするのでよかった。

・めっちゃダンスが軽快でかわいい、かっこいい。

・カメラ向きの表情がよすぎる。

 

UUUU

・めちゃくちゃかっこいい。

・観客めっちゃ煽るじゃん……!

・ソロパートはあるけど揃いの振りがばっちりなのかっこいいなあ。

 

SAMURAIZM

・めちゃくちゃかっこいい。

・歌舞伎とか殺陣とか、パンフ情報だと日舞も入ってるらしくて、かっこいい和要素全部盛り!っていうのがすごいよかった。

・秋島の3人揃って踊るところめちゃくちゃかっこいい。

 

MC(曲の話~ユニット別ファンサ~サプライズ)

・スタリがワチャ~と円になるやつ、初めて見たはずなのに「おなじみの」みたいな気持ちになる。

・音也の「インパクト大!」、LINEスタンプにして売ってくれ。セシルちゃんが「……?」って戸惑ってたのもかわいかった。

・サプライズが1週目は「ありがとう」→2週目は「大好き」なんですね。

・サプライズに喜ぶレンくんの照れ笑顔プライスレス。

 

ST☆RT OURS

・アウターがマジでかわいすぎる

・歌詞……良?

・マジLOVEスターリッシュツアーズが音也センター曲だとしたら、ST☆RT OURSはトキヤとセシルのWセンター曲なのかなーと思った。

 

続け…!ISHの旅へ

・限界

・振り付けに無限マーク(∞)入っているのがめちゃくちゃいい、ST☆RT OURSを受けての振りだからな。

イリュージョニストかわいいんだけど、後ろでぴょこぴょこしてるW1がかわいい。

・音也がファンサ→トキヤがファンorカメラに投げキス→トキヤが音也を促して音也ファンサの流れ、めちゃかわいい。

・セイクリッドペアーズ、御曹司好きな人が喜ぶこと全部やっててすごかった。

・HUG SONGはW1春曲です。「赤と黒どっちを選ぶ?」されてオタクは……。

 

マジLOVE1000%

・壊れたのでなにも覚えてない、リスナーヘルプ。

・令和の最新技術で見るのよすぎ。

 

総括的な

・キングダムのときより「どの席座っててもファンサがこっち向いてる」気がした。

・ソロ曲がアルバム表題曲とはまた違った意味で原点回帰ぽさがあってよかった。

・今回全体的に衣装が「本物っぽい」と思っていたのですが、実際にアイドル衣装のデザインやられる方が担当と知ってなるほどとなった。

・音也がいろんな人のカメラに割り込んでいくのすごく「音也らしい」。最近は「何も考えていない」と「計算でやっている」が両方らしいので、オタクを惑わすな。

なっちゃんがMC仕切ってるの年長者っぽくてとてもいいな。

自分以外にやってる知り合い見たことないので「ロマンティックミステリーゲームはいいぞ!!!」をアピールするブログ

みなさんはロマンティックミステリーゲーム(以降ロマミス)をご存知でしょうか?

株式会社オレンジ*1が手がける、いわゆる女性向けミステリーゲームです。2022年8月現在3タイトルリリースされています。

「え、わたしがやりたいこと全部やらせてくれるんですか!?」と叫びたくなるほどの神ゲームシリーズなのですが、なぜかわたし以外にやってる知り合いが見つからない!!!わたしはこのゲームの素晴らしさを語る友がほしいのに!?

というわけで紹介ブログを書くことにしました、1人でも多くの人にロマミスを知ってほしいから……!

ミステリーのセオリーなどには詳しくないので、そのあたりは主観で語らせていただきます。

このブログが1人でも多くの人に届くことを祈ってる……。

 

そもそもわたしがロマミスを始めたきっかけ

「なーんか謎解きしながら男女カプ吸いてえ……」という思いでニンテンドーeショップを漁っていたときに、『ゴシックマーダー』『少女首領の推理領域』を見つけました。

美麗なイラストに目を引かれてクリックした先には「主人公の女性が探偵役として謎解きしながら、助手役の男性と絆を深めます(意訳)」という求めていたあらすじが!

「これはやるしかない」

2作ともダウンロードしてプレイしました。そしてハマった、ロマミスというまだまだ大きくなっていく沼に……。

 

神ポイント:ミステリーとロマンスのバランス感が神がかっている

そのあらすじに偽りなし!!!

調査パート・推理パートの謎解きや、それを経て明らかになっていく真相、ライトながら骨太なストーリーは単純に楽しめると思います。

そしてそこに挟まるロマンス要素が、全然本編を邪魔していない、それどころか「この流れならラブい選択肢出るわ!!!」と納得できるようになっている。

主観では謎解き7:ロマンス3くらいで、「本編に絡みつつ本編に食い込みすぎない男女カプ」が大好物のわたしにはこの匙加減とても堪りませんでした。

 

じゃあどれがおすすめ?

そんなの……そんなの全部に決まってるだろうが……!という気持ちを抑えて言いますが、どれも同じくらいおもしろいので気になるやつをやるのがいいと思います。

2022年8月現在3タイトルリリースされていますが、1作ずつ独立しており、舞台も登場人物も全員違います。

謎解き難易度はたぶん全部同じくらいなので、「この舞台設定いいな」「このタイトルに出てくるキャラ気になるな」で気楽にタイトル選んでください!!!

ストーリーなど詳しくは公式サイトを見てみてね!!!

 

※〜8/30までセール!

 

※〜8/30までセール!

 

※〜8/16までセール!

 

とにかくやってくれ!そしてわたしと話をしてくれ!!!

マジで神ゲームなんです。

本格ミステリー(ロマンスもあるよ!)が1周10時間くらいで遊べるし、めちゃセールしてくれるし、隙間時間にやれるタイプのゲームなので大作の箸休めにも丁度いいですよ。

わたしは最初に見たエンドが親だから1周しかできてないけど、どの男性もエンディング見たくなるほど魅力的だし、主人公の女性たちはみんな利発でかわいい。

なにはともあれ、みんな、ロマンティックミステリーゲームをよろしくお願いしまーす!!!

【Web再録】『Free!』非公式感想同人誌 ~遙と凛に偏っています~

注意事項

本書はいちオタクが『Free!』シリーズを総括した感想本になります。

カップリング要素はないつもりですが、わたしは『Free!』を“遙と凛の物語”として捉えたため、ここから先の感想も遙と凛やふたりの関係に偏ったものになります。念のためご注意ください。

 

 

はじめに

本書をお手に取っていただきありがとうございます。

まずは自己紹介がてら『Free!』シリーズとの出会いの話をさせてください。『Free!』シリーズのことは放送が開始された2013年から認知していましたが視聴には至らず。2017年春頃に家族の付き合いで『劇場版 Free! -Timeless Medley- 絆』を観ましたが、そこでもなぜか視聴チャンスをものにできず。結局本格視聴に至ったのは2019年の夏。映画館で流れる『劇場版 Free! -Road to the World- 夢』の予告が異常に気になる……! まあ映画観る前に過去作をきちんと見よう、ということで、dアニメストアで見られる分を見始めたのが、『Free!』シリーズとの出会いでした。その時点では、ハマるにはハマったがものすごく狂うみたいな感じにはならず「続編出るなら観に行くぞ〜!」というところに決着しました。

では、なぜこの本が存在しているのか?

それは膝に『劇場版 Free! -the Final Stroke- 前編』を受けたからです。

その衝撃はすごく、公開日の2021年9月17日からこの本が出るに至るまでに、回数重ねるつもりなかったのに8回観るわ、シリーズ2周するわ、自分でも信じられないくらいの足の取られ方をしています。

折角これだけ狂ったし、『劇場版 Free! -the Final Stroke- 後編』が公開される前にシリーズを総括した感想文書いて本として残そう、という発想のもと、本書ができました。内容は「遙が自らにかけた枷」「遙にとって凛とは何者か?」「壁の乗り越え方はもう遙の中にある」の3本立てです。

いちオタクの妄言として、お楽しみいただければ幸いです。

 

 

表記について

dアニメストアの配信を利用して視聴したため、セリフやシーンがソフト版とは異なる場合があります。

また本文では聞き取ったセリフの抜粋を行っていますが、ニュアンスを表現する記号はわたしの受け取り方を踏まえて表記しています。

また、以降の本文では下記の略称表記を使用します。

Free!』:1期

Free! -Eternal Summer-』:ES

映画 ハイ☆スピード! -Free! Starting Days-』:HS

『劇場版 Free! -Timeless Medley- 絆』:TM絆

『劇場版 Free! -Timeless Medley- 約束』:TM約束

『特別版 Free! -Take Your Marks-』:TYM

Free! -Dive to the Future-』:DF

『劇場版 Free! -Road to the World- 夢』:RW

『劇場版 Free! -the Final Stroke- 前編』:FS前編

 

 

遙が自らにかけた枷

ひとつめの枷

これはセリフから見るのが一番早いので早速引用します。

 

「十で神童。十五で天才。二十歳過ぎればただの人」(1期1話・遙)

 

遙を象徴するセリフですね。シリーズを重ねるたびに出てくるこの言葉、FS前編のラストでは見事呪いの言葉と成り果てていたことに気づかされます。

この言葉こそ遙が自分にかけた枷ですね。二十歳を過ぎたら“ただの人”になってしまう。

高校三年生の時期に特に顕著だっただけで、遙は基本的に将来のことを考えるのが苦手なように見えます。それは“ただの人”になったあとのことを考えられないからでは?

では、遙にとって“ただの人”とはいったいなにを指すのでしょうか。わたしは“水を感じられない人”のことだと考えています。

 

「水は生きている。ひとたび飛び込めば、そいつはたちまち牙を向き襲い掛かってくる。だけど、恐れることはない」

「大事なのは、水を感じること」(1期1話・遙)

 

「水は生きている。ひとたび飛び込めば、そいつは牙を向き襲い掛かってくる。だけど、恐れることはない」(ES1話・遙)

 

「確かに水は生きている。どんなに成長し変化した体でも、同じように包み込んでくれる。まるで生き物のように。だけど――それはいつまで?」(DF1話・遙)

 

こうしてセリフを追っていくと、遙の水の捉え方が、歳を重ねるごとに変化していくのがわかります。

注目したいのは大学生になった遙。高校生のころまでは、水に対して野生に対するような脅威を感じつつも、同じ“生き物”として恐れず受け入れ続けていました。しかし、十九歳になる年を迎えた遙は、水を“生き物”として感じつつも、そのままであり続けることができるのか、不安を覚えるようになっています。

水を感じられるのは天才である十九歳まで。“ただの人”になったら水を感じることはできなくなる。

無意識にそう思い込んでいても不思議ではありません。遙はそれだけ、水と、「二十歳過ぎればただの人」という言葉と、共にあったので。

だとすれば、遙の刹那的な生き方も納得できるような気がします。

 

ふたつめの枷

FS前編で描かれるアルベルトとの勝負の際、遙は凛にかけられた言葉を思い出します。

 

「勝ち負けや記録に興味がなくても――水の中じゃてめぇが一番だって思ってんだろ?」(ES・凛)

 

遙はアルベルトとの勝負を通して、この言葉を思い出して、自分が生来持っている闘争心を思い出したのではないでしょうか。“水を感じるため”だけに泳いでいた遙が、“勝ちたい”という思いを明確に表明したことは大きな変化だと言えます。

しかし、遙はこうも言います。

 

「なにかを捨てなきゃ生き残れない。でも、捨てたくないと思った」(DF12話・遙)

 

遙はいまの自分のまま、仲間の存在に支えられた自分のまま、“勝ちたい”と思っていたはずです。だから、FS前編で凛が下した決断に動揺してしまった。いつまでも競い合っていけると思っていた凛と泳ぐ機会が失われてしまった。

遙が凛を失うのはこれで2度目ですね。1度目は、“中学一年生の冬休みの勝負”です。

この勝負がこの結果でなければ『Free!』が始まらない、かつ、物語の要所で繰り返された挙句、FS前編のラストに重なっていくところが、本当に、すごいです。

では、この“中学一年生の冬休みの勝負”が、遙にどんな影響を与えた/与えているのか、分解していきましょう。

“中学一年生の冬休みの勝負”の真相は、凛が1期11話で語った通りなのですが、それはあくまで凛の視点においての真相なのですよね。“中学一年生の冬休みの勝負”を遙の視点に立って言語化すると、「遙は勝負に勝ったことにより、凛を傷つけてしまった上、目の前から凛が去った」となります。怜が遙たちにその真相を伝えて誤解は解けたものの、その後何度も凛が去る光景を思い出すほどには、遙のトラウマになるようなできごとです。

トラウマの原因になるようなできごととして、下記が挙げられます。

 

トラウマの原因になるようなできごと

(中略)

〇 家族や友人の死の直接的な体験、その他の喪失体験 など[1]

 

凛が遙の前を去ったのは、“友人の喪失体験”と言っていいでしょう。

“友人の喪失体験”は、もうひとつあります。TM絆の最初のシーンで、水泳部を退部した遙とすれ違う郁弥が描かれます。

 

「なんで水泳やめるんだよ……ハル……」(TM絆・郁弥)

「――ああ、同じだ」(TM絆・遙)

 

遙は自身が水泳をやめることで、郁弥のことも失ってしまいます。

ちなみに遙は残される痛みを“中学一年生の冬休みの勝負”を通して知っているので、郁弥に酷いことをしたという自覚があります。しかし、凛は自分が原因で遙が水泳をやめたこともそれで遙が傷ついたことも知りません。この遙と凛の非対称性については後述します。

このような経緯から、遙にとって“勝つこと”は“友人の喪失体験”と強く結びついていると考えられそうです。

遙は“勝ちたい”という自分の気持ちに気づきました。しかし、“勝つことで失う”経験を重ねてきており、それが“勝つためにすべて捨てる”ところまで突き抜けてしまった原因だと思います。

 

 

遙にとって凛とは何者か?

ここまで遙の話題に重点を置いてきましたが、そんな彼を語るにおいて、切っても切れない存在が凛です。この章では遙にとって凛がどんな位置づけの存在なのかを明らかにしたいと思います。

 

凛にとっての遙

“遙にとって凛とは何者か?”を考える前に、“凛にとって遙とは何者か?”を整理したいと思います。

これに関しては凛本人がまとめてくれているので早速引用します。

 

「この前の大会のときに……お前の気持ちを無視して、一方的に気持ちを押しつけちまった。――悪かったな。けど、これだけはわかってほしい。――俺はずっと、お前に憧れてきたんだ」(ES12話・凛)

 

「なあ、ハル。俺はずっとお前に憧れてきたって言っただろ。お前は覚えてねえかもしれねえけど、俺はいまでも覚えてる。――初めてハルと会った日のこと」(ES12話・凛)

 

ここで凛が遙に向けている憧れの正体や、遙にどうあってほしいのかがきっちり明かされるので、凛はわかりやすくていいですね……。

 

「親父は憧れだった」(TM約束・凛)

 

凛にとって最初に憧れたのは父親の虎一でした。虎一に憧れて水泳を始めた凛は、父親の喪失によってひとり水の中に取り残されてしまう。そんな凛が同じように水の中にひとりでいた遙と“出会って”憧れるのは、なんだか自然というか、フェイトを感じますね。

ところで、シリーズを重ねることによって、凛が遙に抱く感情がどんどん大きくなっていくのがめちゃくちゃおもしろくないですか?

 

「もし一緒に泳いでくれたら――見たことのない景色見せてやる!」(1期1話・凛)

 

最初は“いっしょにリレーやりたいやつ”だっただけなのに、

 

「俺といっしょに世界に行こう、ハル!」(RW・凛)

 

小6の時点でこの認識になっています。でもES12話の話と整合は取れているのですよね……いやでもまあ、昔からずっと“遙に前を泳いでいてほしい”というのは変わらないということですね。

 

余談1・凛と宗介

「いっしょにリレーやりたいやつ、見つけたんだ」(ES2話・凛)

 

わたしは初めてこのシーンを見たとき、「凛はなんて罪な男なんだ……!」と驚いてしまいました。しかし幼い凛と宗介の思想の違いを知ったあとに再びこのセリフを聞くと、意味合いが変化することに気づきます。

 

「考え方が違うんだ。俺とお前はチームにならないほうがいい」(ES4話・宗介)

 

宗介のこの言葉にショックを受ける凛。

この時点で、凛は宗介と“仲間”になりたかったはずなので、先に凛を拒絶したのは宗介です。

であれば、あのセリフは凛の罪ではなく、宗介の罰なのではないか……?

凛が遙を選んだのは、フリーで競ってその存在を知ったことが直接の原因で、宗介の言葉は関係なく、宗介自身も凛が遙を選んだことを気にしていません。なによりふたりはお互いにお互いのことを最大の理解者だと知っているので、だから凛の口から“宗介を思ったがゆえに”あのセリフが出てくる、と。うまいなあ……!

宗介が故障のあとに抱いた夢がそのまま贖罪になっているのもうまいですね。地方大会で、凛や愛一郎、百太郎と本当の“仲間”になること。それが贖罪というか、宗介が自分を許すことができた瞬間なのかなあと思いました。

宗介に関しては、愛一郎にかけた言葉が、凛から自分に与えられた言葉になり、それがさらに愛一郎から返ってきた言葉になった。この言葉の循環が本当に美しいな、と感じています。

 

余談2・遙と真琴と凛

“I Swim”

“Free”

“For the Team”

 

真琴、遙、凛がそれぞれ卒業制作でレンガに書いた言葉です。

わたしは、真琴と凛がそれぞれ遙に与えたものだと解釈しました。

遙を最初にスイミングクラブに誘ったのは真琴です。

 

「ねえハルちゃん! スイミングクラブいっしょに入ろうよ!」(ES6話・真琴)

 

真琴が遙を水の中に誘ったのです。でも、遙と真琴は水の中で結びつかなかった。そんなふたりを“仲間”として結びつけたのは凛なのではないでしょうか。

ところで真琴。次のセリフの意図が本気でわからないので教えてくれないか?

 

「俺も、ハルと真剣勝負がしてみたかったんだ。――なんでだろう。凛が、羨ましかったのかな」(ES6話・真琴)

 

遙にとっての凛

凛は素直でわかりやすくて語りやすくていいですね~。さて、ここまで凛を中心に見てきましたが、いよいよ遙から見た凛の話をしていきます。

とはいえそんなに難しい話ではなく、遙もまた凛に憧れているなあというのは各シリーズからなんとなくは読み取れるのですよね。

 

「凛……俺も、俺も……お前みたいに――」(HS・遙)

 

「俺も覚えてる、その大会のこと」(ES12話・遙)

 

「俺も、凛には感謝してる」(ES13話・遙)

 

これは推測なんですが、遙は水の中で自分と“出会って”くれた凛に感謝していると思うんですよ。でも、遙は凛に対する感情を言語化して表明していないのです……! だから、自分が遙の中でどれだけ大きな存在になっているのか、凛は知らないわけですね。

でも、1回だけ、ちゃんと言っていたシーンもあります。

 

「俺は、お前のおかげで未来に歩き出すことができたんだ。それなのに、今度はお前がまた立ち止まるのか! なぜいまになって水泳を諦めるなんて言うんだ! お前は柿以下じゃないだろ」(TYM4話・遙)

 

ここは折角凛に向けている感情を伝えることができたのに前提がすれ違っていたため伝わらなかったやつです。

その後もう1度凛への本音チャンスがありました。それがFS前編のラストシーンだったわけですが……「凛がいたから戦う気持ちを持てている」と伝えることはできました。よくできました。でも凛がそのボールを受け取れる場所にもういなかった……。

凛が「プロを目指す」と言ったとき、

 

「だったら、ひとつ約束しろ。俺に負けても水泳を辞めるとか言うな。醜態を晒すな。負けても泣くな」(1期4話・遙)

 

このシーンの回想が入ります。このセリフの直前に、

 

「俺はフリーしか泳がない。お前のために泳ぐんじゃない」(1期4話・遙)

「――いいや。お前は俺のために泳ぐんだ」(1期4話・凛)

 

というやり取りが入っているのですが、ここから察するに、凛は、遙を目標にし続けたいけど、遙に依存せずに泳ごうとしていたのでしょうか。“自分が遙の中でどれだけ大きな存在になっているのか、凛は知らない”わけなので、それが、できてしまうと……。

そして、遙はそれを“去った”と受け取った。前章で言及した“友人の喪失体験”の再来ですね。

紫目遙が言ったことは個人的に遙の本音の一部なのだろうとは思います。遙は友人、というか凛が去るのをどんな形であれ恐れているので。まあそれで「じゃあ凛が言われたくないこと全部言ってしまえ!」になるとは……思ってなかったですけどね……。

全部を捨てた遙、意図せずして1期の凛と同じ道を辿っているように見えます。1期の凛が仲間によって救われたように、遙も救われるといいな、と思います。

 

 

壁の乗り越え方はもう遙の中にある

ここはシリーズを2周した視聴者目線で「遙! お前はもうヒントというか答えを持っているぞ!」と思ったセリフを抜粋して連ねていくページ。

 

「俺はやっぱり水泳が好きだよ。――でも、そこにハルもいてほしい」(HS・真琴)

 

「遙。――信念を貫き通せ。リレーも個人もお前の大好きなフリーだろ。過去になんか捕らわれるな。そうすれば、お前は最強なんだから」(HS・尚)

 

「今日ハルが倒れたのを見て、『あ、こいつも普通の人間なんだなあ』って」(HS・旭)

 

「心配しなくても、郁弥はただの人になんかならないよ。郁弥は郁弥なんだから」(DF1話・日和)

 

記憶力がよわよわなのでもう他に思いつかない。でも遙、本当に、もう答えは見えてるからな……!

 

 

あとがき

感想書くのって……ムッズ! 最初はもう少し論点絞って長めに整然と書こうとしていたのですが、全然できませんでした。文体も途中から別物ですし……。

でも、わたしがFS前編のラストシーンを食らってシリーズを2周した衝撃が伝わっていたらいいなあ、と思っています。

最後にわたしが『Free!』に願っていることふたつの話をします。

ひとつは“桐嶋兄弟が揃って世界の舞台に上がること”。なぜならわたしが『Free!』で1番好きな人は桐嶋夏也さんだから。夏也の夢叶ってほしい。なんなら『Free!』に出ている選手の夢全部叶ってほしい!

もうひとつが“遙と凛が世界の舞台でフリーの勝負をすること”。なんなら仲直りだけでもいい。遙と凛が共にある未来をわたしは願っています。

 

 

参考URL

Free! Series Portal Site〈http://iwatobi-sc.com/〉(最終閲覧日2021年11月23日)

dアニメストアhttps://anime.dmkt-sp.jp/〉(最終閲覧日2021年11月8日)

国立成育医療研究センターhttps://www.ncchd.go.jp/〉(最終閲覧日2021年11月4日)

 

 

 

[1] 国立成育医療研究センター『子供のトラウマ診療ガイドライン

https://www.ncchd.go.jp/kokoro/disaster/to_torauma_Ver3.pdf